研究概要 |
木星はガス成分領域の「エンベロープ」と「固体コア」の中心核から横成されている。この木星内部は非常に高圧・高温下にある。水素を主たる成分とするガス惑星である木星の内部構造、とりわけ固体コアの大きさを明らかにする上では、高圧・高温下にある水素の物性か重要な鍵を握っている。これまでに複数の埋論モデル(水素の状態方程式)が提唱されているが、そのいずれが正しいのか決着はついていない。そこで、私は共同プロジェクトとして、4年前から大阪大学で水素のレーザー衝撃圧縮実験に取り組んでいる。今年度は55GPまでの水素の圧縮実験および追実験に成功した。昨年度および今年度の実験結果(ユゴニオデータ)によると、30GPa以上では、第一原理計算の理論モデルと調和的である傾向を示唆している。これら実験成果についてはPhys.Rev.Bに掲載済みである。今後は水素の金属化が起きると予想される200GP@6000Kを静的圧縮+レーザー圧縮の二段街撃圧縮実験により目指すことを考えている。 次に、木星の形成に関する研究について。木星形成の標準シナリオ(コア集積モデルと呼ばれる)によると,木星の固体コアがある臨界質量に到達した時、現在まとっているような多理のガスを短期間のうちに捕獲したと考えられている。小さなコアほどガス捕獲に時間を要するため、木星のような小さなコア質量を持つガス惑星形成が問題であった。これまでの先行研究で、エンベロープ中の低いオパシティが小さなコアをもつガス惑星形成を可能にすることが指摘されている。そこで、本研究では想定され得る最も低いオパシティケースに着目し、コア集積モデルで説明可能なガス惑星の最小コア質量を求めた。その結果、グレインなしのオパシティの場合は1.7地球質量、水素・ヘリウムガスのみ存在するオパシティの場合には0.75地球質量であることが分かった。従来、木星コアとコア集積モデルとが整合的ではないと反論とれているが、これらの値は、コア集積モデルでも現在の木星コアを説明可能であることを示すものである。
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