研究概要 |
ブロック共重合体PEO-b-PMA(Az)薄膜を鋳型としたテンプレート電解重合を行った。前年度にモノマーと各ドメインの相互作用により、導電性高分子のナノ構造が制御できることを明らかとしている。本年度は、PEOシリンダードメインに選択的に溶解するピロールと、両ドメインに溶解する2,2'-ビチオフェンをワンポットで電解重合を行った。電解重合後の薄膜断面のSTEM/EDS分析を行ったところ、PEOシリンダー部位からはポリピロールに由来する窒素元素が、PMA(Az)マトリックス部位からはポリビチオフェンに由来する硫黄元素が検出された。つまり、ポリピロールナノワイヤとポリビチオフェンのヘテロ接合をワンポットで作製することに成功した。PEO-b-PMA(Az)テンプレートはモノマーを認識し、各ドメインが重合場として作用していると言える。このようなドメイン選択的電解重合は、物理的な空孔を有するテンプレートでは不可能な技術である。 ポリピロールナノワイヤの長さを系統的に変え、導電率を測定した。ナノワイヤの導電率はテンプレートを用いずに作製したバルクフィルムよりも160倍大きな値となった。これは、直径10nmという空間で重合することにより、ポリピロールの高次構造が制御された結果であると考えている。導電性高分子が本来有する特性を評価する上で、有効な材料となると期待している。 ブロック共重合体PEO-b-PMA(Az)の相図をSAXS測定の結果に基づき作成した。分子間相互作用の弱いPS-b-PIなどのブロックコポリマーに比べて、非常に広いPEOの体積分率(0.07から0.52)でシリンダー相を呈することが明らかとなった。この特異的な現象は、PEO-b-PMA(Az)が液晶側鎖を有し、各ドメインに非対称性を生じさせていることが原因であると考えられる。PEOの体積分率が広い領域でシリンダー構造を形成することは、シリンダー直径と周期を独立に幅広く制御できることを意味しており、PEO-b-PMA(Az)薄膜はドメインサイズを系統的に制御できるテンプレートとして応用展開ができる。
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