研究課題
特別研究員奨励費
両大戦間期ドイツの民間防空は、第一次世界大戦後の戦争およひ空襲イメージとそれを利用した宣伝と動員により成立した。今年度は、以下の二つの関心を明確にもって研究を進めた。第一に、20世紀前半に開発された新たな戦争テクノロジーの影響下での社会変容に対する関心である。具体的には、未来戦争イメージが訓練やその動員に際してどのような役割を果たしたかを、ガスマスクや防空設備そして防空都市計画などを例に雑誌・新聞資料を用いて考察した。そして第二に、ナチス期の帝国防空同盟と防空演習の実態分析を進め、防空共同体構想から国防による民族共同体の維持についての研究をすることである。その際には、全員参加体制を至上目的とした民間防空活動における女性、子供、老人の役割を、防空活動報告や防空教育資料を用いて実証することとなる。本年度は、以上の二つのテーマをより深めるために、ドイツ各地の文書館での資料収集、そして具体的な論文の執筆と叙述を進めた。この成果は、2010年9月のドイツ・マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクでの研究報告として、ドイツ語で発表し高い評価を得た。また、2011年1月には東泉大学駒場キャンパスにおいてコロキアムを実施し、博士論文の具体的な全体像について発表した。しかしながら、課題はまだ山積しており、「宣伝」そのものの扱いや、「恐怖」というタームの扱いなどに対する不備の指摘をいただき、今後はこの点を課題として研究を最終段階へと進めていく予定である。今後、本研究が完成することによって、20世紀に登場した新たな戦争手段である「空爆」と20世紀史の関係性が明らかになることだろう。そして、それはドイツ史のみならず日本史やその他の地域の現代史にとって重要な示唆を与えうると考えている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
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