研究課題
特別研究員奨励費
他者の運動が自身の運動に及ぼす影響を調査するために、他者の運動の観察による印象評定についての研究を更に進めた。更に複数の他者の動作を知覚する際の視覚的特性を検討した。平成23年度の本研究員の成果は以下の通りである。(1)受け渡し動作における丁寧さの評定:本研究では人が物体を他者に渡す際の渡し方について、丁寧さの印象に関わる要因について検討し、特に受け手の性別による違いについての影響を分析することを試みた。被験者は渡し手が丁寧に物体を差し出す場合と普通に物体を差し出す場合のビデオ映像を観察し、各動作について印象評定項目に回答した。印象評定項目得点の分析の結果、受け渡し動作について丁寧さの印象を判断するために男性は女性に比べると運動の特性や機能的側面により敏感で、女性ではその魅力といった対人的な特性を重視する傾向にあった。この成果は今年度開催の国際学会KEER2012において発表され、発表内容は同学会論文誌に掲載される予定である。(2)他者の歩行方向判断における周囲の人間の動作の影響の検討:集団の中で特定の他者の運動を特定する際の知覚の特性について、周辺視野で複数の物体が固まって提示されると個々の物体の同定が困難になるというクラウディング効果を利用して研究を行った。実験では歩行している人間の関節運動情報のみから構成されたバイオロジカルモーション(BM)刺激を複数体、周辺視野で観察させ、その中の1体の歩行方向を判断させた。その結果、観察者はターゲットの歩行方向を正しく回答することが困難になった。更に、ターゲットとなるBMの歩行方向の回答は、近接する妨害BM刺激の歩行方向の影響を受けた。以上から、人が他者の動作を認識する時には対象に近接する人間の動作から妨害を受けかつ動作の影響をも受けるということが示唆された。この成果は今年度開催の国際学会ECVP2012において発表される予定である。
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http://www.fennel.rcast.u-tokyo.ac.jp/profilej_hikeda.html