研究課題/領域番号 |
09J10184
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武石 明佳 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 細胞死 / 細胞死実行因子apaf-1 / 腸 / 恒常性 / カスパーゼ / 損傷 / danger signal / Intestinal stem cell / JAK/STAT |
研究概要 |
ダメージを受けた個体では、その情報を伝えるdanger signalが正常細胞へ伝播され、生体防御機構を活性化するという概念が確立されたが、どのようなdanger signalが、個体や組織に対してどのような影響を与えているのかは未だ不明である。これまでの研究成果から、損傷後の生存には腸におけるカスパーゼの活性化が必要であること、表皮の損傷後30分以内に腸のEC(吸収細胞)においてカスパーゼの活性化が認められ、ECが細胞死を引き起こすことを見出した。また、dpf-1変異体では損傷後の体液中に致死性誘導因子が存在することを示し、野生型とdpf-1変異体において損傷を与えた場合と与えていない場合の体液のプロテオミクス解析、メタボロミクス解析を行った。 本年度はまず、電子顕微鏡観察により、dpf-1変異体の腸を取り巻く筋肉細胞やECMに以上があることを示した。また、野生型の腸におけるカスパーゼの活性化ECが腸管内腔側に突出し、核膜の構造が不明瞭になる様子が観察され、損傷後に腸細胞が脱落する様子をより詳細に解析した。さらに、dpf-1変異体で腸のECの入れ替わりに異常があることを示すため、一過的にECのみにプローブを発現させたハエを6日後に解剖することにより、プローブを発現した細胞がどの程度入れ替わったかを調べる実験を行った。その結果、野生型では6日間で40%程度のECが入れ替わったのに対し、dpf-1変異体では入れ替わったECは10%以下であった。このECの入れ替わりの阻害が損傷後の生存にどのように影響するかを検証するため、ISC(腸幹細胞)の細胞増殖を抑制し、新たなECの産生が抑制されたショウジョウバエを用いて表皮の損傷後の生存率を調べる実験を行ったところ、生存率の低下が認められた。さらに、プロテオミクス解析で得た致死性誘導因子の候補分子の一つ、カテプシン様タンパク質がdpf-1の損傷後の生存率の低下に寄与している可能性を示すデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当始の研究計画では、ショウジョウバエの体液性免疫の主要組織である脂肪体の関与を予想し、体液のプロテオミクス解析で、損傷後のdpf-1変異体体液中に存在する致死性因子の同定を行う計画であった。しかし、傷害後の主要応答組織が腸であったことから、致死性因子の同定のみならず、腸におけるカスパーゼ抑制の影響を詳細に解析することができ、カスパーゼが腸細胞の入れ替わりに与える影響や、損傷部から腸までのシグナル伝達の仕組みなどについても明らかにでき、多くの新規の知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
プロテオミクス解析で得た致死性誘導因子の候補分子の一つ、カテプシン様タンパク質がdpf-1の損傷後の生存率の低下に寄与している可能性を示すデータを得た。この遺伝子については、遺伝子配列から「カテプシン様プロテアーゼ活性をもつ」と予想されているが、これまでにほとんど研究が行われていない。今後、この遺伝子についてdpf-1変異体の示す表現型への関与や、カテプシン様プロテアーゼ活性の測定、また、タンパク質の発現部位、時間を詳細に調べることにより、カスパーゼが関与する傷害に対する生体防御機構を分子レベルで解明することが期待される。
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