研究課題
特別研究員奨励費
申請者は、昨年度までに置換基の脱離反応によるタンパク結合性の変化を蛍光制御原理とした近赤外蛍光プローブの新規分子設計手法を構築し、β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)プローブ6SqGalの開発に成功している。そこで、本年度は本設計法の更なる有用性を示すため、以下の二点について研究を進めた。1.脱リン酸化酵素検出蛍光プローブの開発とウェスタンブロッティングへの応用について検討した。具体的には、リン酸基の導入によって色素のタンパク結合を阻害し、アルカリホスファターゼ(ALP)によってリン酸基が加水分解されるとタンパク結合が生じ、蛍光強度が上昇するというALPプローブを開発した。さらに、開発したプローブをウェスタンブロッティングに応用し、既存の試薬と比較して標的タンパク質が高感度に蛍光検出可能であることを示した。2.6SqGalを用いたβ-Gal活性のin vivoイメージングについて検討した。具体的には、ハイドロダイナミクス法という遺伝子導入法によってマウスの肝臓にβ-Gal遺伝子を導入し、発現した酵素活性の蛍光検出を試みたところ、対照遺伝子を導入したマウスの肝臓と比較して顕著な蛍光が認められ、開発したプローブを用いた酵素活性のin vivoイメージングに成功した。上記のように、本年度は既存の手法では開発が困難であったALPおよびβ-Galの酵素活性を検出する近赤外蛍光プローブの開発と応用に成功し、タンパク結合を利用した分子設計法の有用性を示した。本研究において確立された近赤外蛍光プローブの設計法はさらに多様な生体分子を動物個体において可視化しうるという観点からプローブ開発研究において極めて意義深いものであるとともに、核磁気共鳴(MR)シグナルを変化させる分子設計法を同時に分子内に組み込むことによって当初の研究計画に記載した近赤外蛍光とMRイメージングを組み合わせたマルチモーダルな新規活性酸素種プローブの開発が達成できると期待される。
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