研究概要 |
昨年度においては、第一に、本研究の予備実験として行ってきた、キイロショウジョウバエ前胸線細胞の時計遺伝子/タンパク質発現および細胞内Ca^<2+>スパイク頻度リズムにおけるシナプス性調節についての研究成果を、Nature Communications誌に投稿し、4名の査読者からのコメントを受け、これに対し追加実験を行った。現在、リバイズ原稿を再投稿し、プレアクセプトされたところである。 第二に、前年度までのイメージング実験により得られた研究成果から明らかとなった、キイロショウジョウバエ中枢時計ニューロン(LNs)における概日性細胞内pHリズムが、個体レベルの概日性出力と関連性を持つのかどうかを検証した。具体的には、まず細胞内プロトン濃度調節に関与すると推定される4つの候補遺伝子(V-ATPase、mitochondrial K^+(Ca^<2+>)/H^+ exchanger、Na^<+->driven anion exchangerおよびNa^+/H^+ exchanger)に対するRNAi系統(Vha100-RNAi、LETM1-RNAi、Ndae1-RNAiおよびNHE1-RNAi)をVienna Drosophila RNAi Centerから入手した。これらの系統と中枢時計ニューロンドライバー系統との交配により、LNs特異的に目的遺伝子をノックダウンした系統を作出し、その個体の歩行活動リズムを測定した。その結果、LNs特異的にmitochondrial K^+/H^+ exchangerをノックダウンした系統(Pdf-gal4;LETM1-RNAi)において、有意に自由継続周期が長周期化することが明らかとなった(LETM1-RNAi=23.54±0.09時間、Pdf-gal4;LETM1-RNAi=24.36±0.08時間、P<.01,one way ANOVA)。現在、この歩行活動性に変化が見られた系統のLNの細胞内pHホメオスタシスにどのような変化が生じているかを検証するために、RNAiと同時に蛍光pHセンサーdeGFP4を発現する系統を作出し、イメージング技法を用いた一過的細胞内酸性化による細胞内pH変動の測定に取り組んでいる。
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