研究概要 |
算数能力の高い人は自閉症傾向が高く,また自閉症者には,数に対する特別な関心が見られるというこれまでの先行研究(Baron-Cohen他,2001)を踏まえ,前年度までの研究において,自閉症特性と数的志向性(非公式な場面でも数や数学へ注意・関心を払う傾向),算数能力との関連性を検討し,数学に対する日常的な関心度と自閉症特性との関連性を明らかにした. H24年度は,そのような問題意識をもとに,(1)工学部と文学部の大学生を対象に,日常的な関心度を測る質問紙を用い,いずれの興味・関心領域が,算数能力の高さと自閉症特性の高さにつながっているかどうかを検討した.結果として,理数関心型の人が算数能力尺度においても高得点を示し,対人関心型の人が自閉症特性が低く,対人的な自閉症傾向が見られないと示されたことは,今回の興味関心度尺度の妥当性を示唆する。ただし,本研究において予測していた「理数領域に対する日常的な関心」と自閉症特性との関連性はみられなかった. 次に,(2)数学の得意な社会人の養育者を対象に就学前の「文字・数・他者への興味関心」調査を行った.12名の数学の得意な社会人の保護者を対象に,就学前に「文字・数字・算数・言葉・他者への興味関心がどのようであったか,12項目からなる調査票と,自由記述によって検討した.その結果,数学が得意な社会人は,就学前に文字に対しても数字同様に関心を持っている傾向が高いことが分かった.
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