研究課題/領域番号 |
09J40075
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
教育心理学
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
斉藤 章江 同志社大学, 社会学部, 特別研究員(RPD)
|
研究期間 (年度) |
2009 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2011年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2010年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2009年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 語義失語 / 意味知識 / SD(Semantic Dementia)患者 / 意味障害仮説 / 枠組みの制約 / アクセントの産出 / アクセントエラー / 音韻エラー / SD (Semantic Dementia)患者 / 音韻の枠組みの制約 / 音韻処理 / 単語の系列再生課題 / 単語復唱課題 |
研究概要 |
語義失語患者(Semantic Dementia:SD患者)を対象に患者の音韻エラーを分析し、その生起要因を解明することを目的として研究を進めてきた。SD患者は単語の意味を徐々に失うという意味知識の選択的障害を持つ。一方で(複数の)単語の再生や自然発話場面で音韻エラーを産出する。一見、意味と音韻の二つのレベルの障害を持つように見えるが、意味の障害が音韻の操作に悪影響を与えていると考えられる(意味障害仮説)。すなわち、単語の意味は単語内の音系列を1つに束ねる働きを持っており、SD患者では単語の意味の喪失により音系列を束ねることができず、結果として音韻処理レベルの操作にエラーが生起する。この仮説が正しければ、SD患者の音韻エラーのパターンは健常成人のそれと同じであると予測される。現在までの研究により、健常成人の音韻エラーは単語の枠組みの制約という、音韻規則を反映した形で起こっていることが分かっている。また、意味障害仮説を別の視点から検討する方法として、音韻表象のもう一つの重要な構成要素であるアクセントを取り上げ、単語復唱課題でのSD患者のアクセントの産出を分析することにより、音韻表象への意味の影響を検討してきた(患者の成績との比較のため、患者と年齢および居住地域を統制した健常成人群に対しても同じ課題を実施した)。結果、SD患者は単語のアクセントの産出においても意味障害の影響が現れることが分かった。これらの結果は意味障害仮説を支持する。本年度は更に、患者の産出するアクセントエラーと音韻エラーの両方の特徴について分析を加えた。分析の結果、どちらのタイプのエラーもある特定のパターンを示すことが分かった。これらは、意味知識の崩壊が原因で生じるものと解釈でき、エラーの特徴からも意味障害仮説が支持されることが明らかになった。また本年度は初年度に検討した「枠組みの制約」という仮説についてより精緻:な結果を出すために健常成人に言い間違いを引き起こす実験を実施した。実験的に統制された刺激を用いた状況で、日本語話者での音韻エラーへの枠組みの制約の影響が生起するかどうか検討した結果、枠組の制約の効果が強力に現れることが明らかになった。これは自然に起こった言い間違いの特徴とも致し、また他言語(英語)での特徴とも一致するという点で言語産出の普遍的プロセスを反映していると考えられる。
|