研究課題
特別研究員奨励費
脊椎動物の心臓は生活環境の変化に伴い、魚類の一心房一心室から鳥類・哺乳類のような二心房二心室へとより高次な形態をとるようになった。このように心臓形態が複雑化するためには心房・心室それぞれを左右に分ける中隔の形成が重要であり、本研究では心房心室中隔が進化の過程でどのように獲得されていったかを明らかにするとともに、発生時の心房心室中隔形成分子メカニズムを解明することを目的とする。本年度は心房中隔が進化のどの段階で獲得されたのか明らかにするために、両生類・肺魚・多鰭類のポリプテルス・総鰭類のシーラカンスを用いて心臓形態比較をおこなった。肺魚は肺を有し、解剖学的に心房中隔を持つと報告されている。ポリプテルスでは心臓の連続切片を作製し、詳細に観察したところ心房に中隔様構造は認められなかった。シーラカンスに関しては、その材料の入手困難さから心臓構造に関する報告はこれまで全くなされていない。今回、東京工業大学の岡田教授との共同研究により、シーラカンス稚魚の心臓を調べる機会を得た。シーラカンスの心臓は稚魚でも大きいため、MRIを用いて内部構造を調べたところ、他の魚類とは異なる特徴的な心房形態をしていることが明らかになった。現在、肺魚や他の魚類との違いをさらに詳しく調べるため、心臓形態の3次元構築を試みているところである。さらには肺魚や他の魚類、両生類の心臓についても心臓形態の3次元構築をおこなう予定である。これにより得られる結果は世界的にも新規性の高いもので、心臓の形態をもとに魚類から両生類への進化について述べる非常に重要な知見となりうる。
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実験医学 28
ページ: 572-576
Nature 461
ページ: 95-99