本年度はまず作製したCIGS膜について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて評価を行った。またエネルギー分散型X線分析装置(EDX)によって、組成の確認を行った。組成比によって結晶粒の大きさが変化することが知られているので組成の確認は重要である。すべてのクラッキング温度において粒径1μmは以上になっており、結晶が密に成長していることが分かった。このことから、クラッキングSeを用いても、十分に良質なCIGS薄膜が作製可能であることを示した。次に、クラッキングSeを用いて作製したCIGS膜質を評価した。欠陥のピーク位置は0.29eV、0.32eVであり、通常のCIGS膜とほぼ同位置であった。これより、クラッキングSeを用いても膜内の欠陥の種類は大きく変化しないことが分かった。 続いて、CIGS膜を実際に太陽電池に応用し、評価を行った。開放電圧特性において550℃のみ電圧が低下しているが平均電圧は500mV程度になっており、クラッキング温度による依存性は明確に現れていない。同様に短絡電流特性を見てもほぼ30mA/cm^2となっている。曲線因子の依存性は、クラッキング温度の上昇と共に改善されていることが分かった。これらのことから、クラッキングSeを用いて作製したCIGS太陽電池において、Seのクラッキング温度上昇につれ、変換効率が向上するとの知見を得た。更に、クラッキングSeを原料に使用することにより、C-V法により膜内の正孔濃度が向上することを見出した。以上の知見を元にCIGS太陽電池を作製し、変換効率15.4%を達成した。
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