研究課題/領域番号 |
10041027
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
人文地理学
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
堀 信行 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (40087143)
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研究分担者 |
篠田 雅人 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (30211957)
知念 民雄 流通経済大学, 経済学部, 助教授 (50236808)
鹿野 一厚 島根女子短期大学, 助教授 (10226110)
大山 修一 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00322347)
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 助教授 (90260786)
岩下 広和 東京都立大学, 理学研究科, 日本学術振興会特別研究員
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
26,400千円 (直接経費: 26,400千円)
2000年度: 8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1999年度: 9,800千円 (直接経費: 9,800千円)
1998年度: 8,100千円 (直接経費: 8,100千円)
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キーワード | 気候激変 / 乾燥サバンナ / 干ばつ / 自然景観 / 牧畜活動 / ガリー侵食 / 土壤水分 / 砂漠化 / 土壌水分 / 環境変化 / 人間対応 / カメルーン / ケニア / ニジェール |
研究概要 |
本研究は、アフリカの乾燥サバンナ帯における環境激変のメカニズムを分析し、環境激変に対する人ぴとの対応を環境認識、農耕や牧畜を中心とする生業様式の観点から明らかにしてきた。篠田は、サハラ砂漠南縁地帯の乾燥地域のサヘル・ニジェールにおける気候の変化を調べるため、土壊水分・植生(葉面積指数)の現場観測を5年間にわたって継続し、それらの陸面状態と地上大気の間の季節・経年変化における相互関係を調べ、地上気象データを入力し、土壌水分量を再現する統計的・物理的モデルを構築した。また衛星NOAAの植生指標データによる植生と米国環境予測センター作成の客観解析データによる上層大気の間の広域的な相互作用について検討した。知念はニジェールにおいて、降雨にともなって発生するガリー侵食の様相と住民の環境認識を調査した。ガリー侵食は耕地の荒廃や水田の堆砂といった負の側面だけではなく、地下水位の上昇やガリー床における定常流の現出といった正の評価も住人によってなされ、流水を利用した菜園経営や家畜飼養、生活水の確保が成立している。大山は、農耕民ハウサが厳しい乾燥環境のなかでどのように農耕を営みながら生計を維持しているのかを明らかにする一方で、1970年代より開始された牧畜民フラニヘのウシ委託に関する経緯に着目し、環境変動との関係を明らかにすることを試みた。鹿野は、ケニアの北部に居住する牧畜民のサンブルが、1991年以降に頻発する干ばつにいかに対応したのかを明らかにした。ウシやヤギ、ヒツジといった家畜を個体識別したうえで、家畜の販売や贈与、信託といった取引や社会関係の分析を試み、干ばつの打撃を受けた家畜群をサンブルが再構築する動態を解明した。研究協力者の吉田未穂は、ケニア西部やインド洋沿岸地域の観光産業に携わる民族集団の相互関係や観光の盛衰に伴う変化の調査を行い、サンブルがマサイを装いながらも、自らの民族アイデンティティを保つ方向性を模索している実態を明らかにした。研究代表者の堀は、カメルーン北部のカプシキ地域では、死後は神体山に回帰し、死者の利用跡地も死を迎え、その後周辺原野と同じ状態になったとき再利用可能と考えている。土地を人間の生死に重ね、痩せ地の過剰利用回避システムをもっている。また雨林とサバンナの移行地域でサバンナ景観の形成に関する観察をした。これらの事例研究の比較から、自然から人文現象をも包含する広義の環境変化において、民族知識や社会集団の関係性が人びとの環境適応を強化している一方で、気候の乾燥化、現金経済の流入や人口増加、耕地面積の減少といった急激な変化が人びとの生業の脆弱性を増大させている状況を指摘することができる。
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