研究概要 |
本研究は,開発途上国の現代建築生産における適応について,その技術的及び文化的生産基盤との関りの中でどのようなプロセスを経て今日の建築を形成したのかをフィリピンの建築を調査対象として行なった.多くの開発途上国は急激なグローバル化の中で欧半の文化やスタンダードの導入により,自国の伝統文化,取り分け建築文化の喪失という状況に直面している.そうした中で地元建築家達の中には先進国の建築生産技術の単なる模倣に終わらない試みも行なわれており,本研究は現代建築が開発途上国に適応する上で主要な問題となる、気候条件、建設技術、そして文化への適応という視点から解明を試みたものである。 本報告書は6章で構成されている.第1章は過去1世紀間の近代建築史の流れを概観し,主に米国の影響とその展開について4期に分けて述べている.第2章では気候条件への適応という視点から前近代から現代に至る設計方法の展開を解説している。第3章では建設技術と材料について、米国からもたらされた近代技術の適応状況について明らかにしている。第4章では文化的適応について建築文化に関わる諸分野の状況について概観している。第5章では現代フィリピン様式を目指した指導的建築家達の活動を通してその内容を解説している。そして第6章ではまとめとして、建築的適応における普遍性と多様性の対立的視点の克服、そして状況の必然性を総合的に捉える感性の重要性を考察し、今後の展望を行っている。
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