研究分担者 |
今市 涼子 日本女子大学, 理学部, 教授 (60112752)
長谷部 光泰 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (40237996)
梶田 忠 東京大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80301117)
秋山 弘之 姫路工業大学, 自然・環境科学研究所, 助教授 (70211696)
岡田 博 大阪市立大学, 理学部, 教授 (40089892)
角野 康郎 神戸大学, 理学部, 助教授 (90127358)
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研究概要 |
1.カワゴケソウ科は他に類例をみないほど極限的な形態的・生態的進化を遂げた被子植物である.この科の系統,形態進化などを明らかにする目的で,スリランカ,インド,タイ,北アメリカ,メキシコ,ガイアナ,ブラジルで現地調査と資料収集を行った.いろいろな種属の資料(乾燥標本,DNA解析用サンプル,液浸標本,種子)を採集するとともに野外観察を行った.これらを用いて以下の研究を行った. 2.matK遺伝子の塩基配列に基づいて分子系統解析を行った.その結果,これまでトリスティカ亞科に分類されていたWedde llinaはカワゴケソウ亞科の基部に位置する属であること,オーストラリアの固有のTorrenticolaがアジアのカワゴケソウ属に近縁であること,形態が著しく異なるDalzelliaとIndotristichaが近縁であること,旧世界の種属が系統的にまとまること,などが明らかになった. 3.トリスティカ亞科でもっとも原始的なMalaccotristicha malayanaと,カワゴケソウ科で特殊化の進んだカワゴロモの形態学的観察を行った.Malaccotrishcha malayanaの匍匐する扁平な軸は先端に非対称な根冠をもち,側軸が維管束付近から内生的に発生することから,この軸は根と相同であると考えられる.短枝と解釈される「ラムリ」は根の表皮近くの皮層から内生的に発生し,「ラムリ」に伴って痕跡的な付着体も内生的に発生することを確かめた.カワゴロモでは,葉状体の辺縁に生じた分裂組織は1度だけ保護組織(根冠とはいえない)を形成し,その分裂組織自身もやがて分裂組織ではなくなり,栄養組織に分化してしまう.その結果として,葉状体が不規則に出芽するカワゴロモ属独特の形態ができあがるのである.このような,非継続的な分裂組織は今回初めて確認された.
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