研究概要 |
本研究が対象としたのは,日本,米国,英国,フランス,カナダの先進5カ国である。研究は,建設プロジェクトの調査分析とテーマ別検討に分けて行った。調査分析では,共通の調査フォーマットを作成し,共同研究者の国ごとに調査を行った。建設プロジェクトには,発電所,トンネル,橋などの大規模土木工事,国際空港,複合ビルなどの大規模建築工事が含まれる。テーマ別検討では,各プロジェクトを,(1)政策・事業化フィージビリティスタディ,(2)プロジェクトファイナンス,(3)プロジェクト組織の編成と調整,(4)プロジェクトマネジメント,(5)不確実性の処理,(6)情報システム,(7)企業戦略に分け,専門の立場から各国で収集されたプロジェクトデータの分析,検討を行った。 各国における建設プロジェクトの実施方式とマネジメントは,それぞれの国の文化,法制度,商慣習,産業の歴史的経緯を背景に,顕著な差異がみられる。そして,他国の企業,生産システムを持ち込む場合にも,各国のプロジェクトの実施,マネジメントの方法を尊重する形で行われている。その国際的な動きが建築家の相互認証であり,プロフェッショナルエンジニアの相互認証である。これらの動向から多く知見を得ることができた。さらに,本研究を進める中で,各国のプロジェクト実施方式,マネジメント方式の差異が顕著に現れ,相互に問題が生じているのは,これら先進国が海外進出をしている地域においてであることがわかった。なかでも,21世紀の有望な市場と目される東南アジアである。本研究の中で予備的に行った調査においても,東南アジア市場では,西洋合理主義に基づく欧米型マネジメントと東洋思想に基づく日本型マネジメントの間の摩擦,利害得失が数多く現れていることがわかった。この市場での先進各国のプロジェクト実施方式とマネジメント方式,ならびに当該国の在来の方式がいかに調整されるかが緊急の研究課題である。
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