研究概要 |
本研究の目的は樹状細胞の分化成熟に伴う機能的変化とその制御機構を明らかにするためのものであり,以下の結果を得た. 1)in vitroにおいて骨髄細胞より増殖分化誘導される未熟樹状細胞は,可溶性蛋白抗原はもとより粒子状抗原や死細胞に対しても食作用能をもち,それらを取り込み,消化分解することにより抗原ペプチドをMHC class II分子に結合させて提示すること,さらに特異的抗原ペプチドを添加した場合に比べ遥かに効率がよいことが示された.また,生体内T細胞領域に分布する樹状細胞が死細胞を捕食し,それら由来の抗原を提示することも示された. 2)生体内に粒子状抗原を投与することにより炎症応答が誘導されると,未熟な単球系細胞が局所に出現し,それらの一部は粒子を捕食すると同時に樹状細胞へと分化し,所属リンパ器官のT細胞領域へと移動し,特異的免疫応答を誘導できることが明らかになった. 3)樹状細胞はin vitro培養での成熟に伴って,MDCやfraktalkine等のケモカイン産生能を増強するが,実際にT細胞領域に分布する樹状細胞もこれらのケモカインを産生していることが組織学的に確認された. 4)末梢血中に存在する樹状細胞は少なくとも3つのサブセットから構成されるが,これらは全て未成熟な細胞であり,最大の集団であるCD1a^+ CD11c^+細胞は表皮のランゲルハンス細胞の直前の前駆細胞である可能性が示された.また,CD1a^- CD11c^-細胞は,既に報告されている形質細胞様T細胞であることが機能的ならびに形態的性状より明らかになった. 5)未熟樹状細胞は取り込んだ抗原を後期エンドソーム/ライソソームへと運ぶが,抗原ペプチド-MHC複合体の形成を行わず,この複合体の形成ならびに細胞表面への提示には炎症性サイトカインをはじめとする成熟刺激が必要であることが示された.
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