研究分担者 |
木村 徹 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (70204980)
藤原 洋一 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (60199396)
林 良雄 京都薬科大学, 薬学部, 講師
山崎 俊正 農林水産省, 農業生物資源研究所, 主任研究官
小林 祐次 大阪大学, 薬学部, 教授 (20127228)
赤路 健一 京都薬科大学, 薬学部, 助教授 (60142296)
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研究概要 |
我々は,基質遷移状態に基づいて,ヒドロキシメチルカルボニル(HCM)イソステアを有するHIVプロテアーゼ阻害剤のデザインと合成を行った.その内,トリペプチド誘導体KNI-272は,選択性が高く極めて高活性であり,in vivoにおいても高い抗ウイルス活性を示した.NMR構造解析並びに分子モデリング研究により,HMC基が,HIVプロテアーゼ活性中心と都合よく相互作用をしており,HMCイソステアが理想的な遷移状態ミミックであることを見いだした. 現在市販されているHIVプロテアーゼ阻害剤は大量投与が必要となっておりそれにより引き起こされる様々な副作用が知られてきた.さらに活性中心を攻撃していることから耐性ができにくいとされているHIVプロテアーゼ阻害剤と言えども,HIV-1プロテアーゼのアミノ酸配列の一部に変異がおこり,感受性の低下が生じることがわかってきた. そこで,HMCイソステアを含むHIVプロテアーゼ阻害剤のデザインと合成を目的として研究を進めた.小分子型かつ高活性の阻害剤が得られればコストの点で有利であり,また耐性発現の問題においても酵素との相互作用部位が少ない点から有利であると思われる.さらに低分子化により組織移行性がよくなる可能性があり体内動態の点でも有利であり,少量投与が可能となることが期待される. 以上の点を考慮して,酵素と阻害剤の分子認識解明に基づいて,HMCイソステアを含む高活性小分子型HIVプロテアーゼ阻害剤のデザインを行い,既存のHIVプロテアーゼ阻害剤において問題となっている耐性と副作用克服の可能性を見いだした. さらに,ジペプチド型HIVプロテアーゼ阻害剤と逆転写酵素阻害剤とのプロドラッグ型コンジュゲートにすることにより細胞膜透過性に優れ,相乗効果を持つ新しいタイプの高活性抗HIV薬を見いだし,"ダプルドラッグ"の概念を提案した.
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