研究概要 |
本研究は歴史地理学,都市史の重要資料である江戸図のデータベースを構築し,それを有効活用するうえで必要となるデータベース・プラットフォームとそれに関連する技術の構築を目的として行った.江戸図は近代的測量によらずに制作された江戸時代の江戸の大量の都市図の総称であり,複雑な歪みを有するため相互比較や縦断的分析に困難が伴った.本研究では,このような江戸図をベクトル化し,さらに正しい方位と縮尺にリマップして蓄積することを提案し,そのためのデータベース構造としてレイヤー構造を採用して,データベース構築の基盤となるプラットフォームを作成した.このプラットフォームは20km×20kmの区域の地図データ,テキスト・データを納めることができる.また各江戸図を個別のレイヤー上に置くことにより,複数の江戸図をコンピュータ画面に重畳させて表示可能である. このプラットフォームでは江戸図データの表示が行えるほか,データの入力,編集,分析にも活用できる.これらの目的のために,レイヤーの管理,重畳表示,色制御,縮尺の選択,表示区域の選択を容易にするインタフェースを開発した.さらに江戸図の歪み分析のための街区面積を計算する機能,元の江戸図と正しい江戸図の間で街区形状の歪みを分析するために採用した射影変換を求める機能をプログラムした.また享保江戸図や安政江戸図を実際にデータ入力し,これらの機能が有用であることを確認した.
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