研究概要 |
古地図の画像を中心とするデータベース化に関して残された主要課題は,(1)画像圧縮,(2)景観要素のデータの作成と人力の効率化,(3)景観要素の地理的位置のデータ化に関する問題であった。(1)に関しては既存ソフトの利用では画質の低下を伴うので高圧縮率の選択は不適当であることが判明した。これに関しては技術的進歩を待つしかない。(2)に関しては既存ソフトの利用では限界があるので、基本的には専用ソフトの開発が望ましいが、本年度の研究では,(2)・(3)に関してGISソフトを利用した景観要素の効率的なデータベース化について検討を進めるとともに、昨年来検討を続けている古地図の地図としての歪みについて,データ化した景観要素を活用して現在の位置と絵図における位置との関係をGISソフトのArcView3やSISを使用して検討を行った。その結果,歪みを測定する場合の基準とする点の選択を十分に検討しておくことが必要ではあるが、昨年度も測定対象とした『一村限明細絵図』は他の地方の村絵図に比べて必ずしも歪みが小さいわけではなく、同宰判内で隣村同士がうまく接合するのは、村の形状を接合するべく調整していた可能性が大きく,そのためにかなり大きな歪みを持っているものと考えられる。国、郡、宰判、村の順に形状を分割したものと思われるが、今後作成した画像データにより検討を進めてみる必要が出てきた。これらは作成したデータベースによる研究の1事例であるが、データベースを作成しておけばこのように様々な検討が比較的簡単に行なえる。歪みの客観的把握に関しては難しい面もあるが、歪みの測定により近世の測量技術の検証も可能であろう。 なお、古地図データベースの公開に関しては、古地図所蔵者の権利や古地図における表記と人権問題という解決困難な問題があることを付け加えておきたい。
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