研究概要 |
本研究は、精神疾患を発病したと考えられる患者の表情のビデオ映像をもとに、遠隔地の医療施設で医師が適切な診断を下すための、客観的な判断材料を提供することを最終目的とする。そのために「妄想型精神分裂病」患者の表情の異常と健常者との差異をえるため、顔表情の特徴を数値化することを当面の目標とし、生活全般における主観的満足度を測定するWHO Quality of Life(QOL)調査票結果と簡単な面接聴取から、主観的な満足度が高いと健常な30代女性2名と精神科診断基準によって精神分裂病・妄想型と診断された患者で、本研究の目的と意義を十分に説明し、同意の得られた30代女性2名を対象者とした。各対象者に10分間の簡単な面接を行い、その間の対象者の顔表情を撮影し、得られたビデオ画像を静止画像としてコンピュータに取り込み、目,鼻,口、首の部分に,いくつかの特徴点を決め,それらのポイントをトレースし,その座標をデータ数値として、表情の計量化をはかった。その結果、健常者に比べ、精神疾患患者の目、口、鼻の各部分の動きが小さいことが各部分の標準偏差から見ることができた。健常者の顔表情は表情の豊かさが部位の変化の大きさとともに前の動きから次の動きに依存して動いていることがわかったが、患者の場合は,表情の変化が乏しく,その変化量は測定誤差からのものが大きいと考えられた。これらの結果より、健常者と患者の釘表情の各部位の変化量には明らかに差異があると結論づけられた。ただし、今回の結論を一般化するためには、今後、実験の対象例数を増やし、患者群の選択、面接方法、さまざまな情動を引き起こす刺激の選択等の実験的な統制をさらに加えた上で、比較検討する必要があると思われる。
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