研究概要 |
本年度は4年間の研究のしめくくりの年として,これまでの研究の総括と,更なる研究の展望を行った。その概要は以下のとおりである。 1. 『マハーバーラタ』の内容と韻律のあいだの相関関係が,トリシュトゥブ,アヌシュトウブ両韻律について確認された。 2. 内容を「導入部」,「概括部」,「物語展開部」と3分した時,最も詩形が自由な形を持つのは,「物語部」であり,「導入部」は最も固定している。「概括部」はその中間に位置する。 3. 韻律形式において,これら層分けに有効な因子は,その自由律部分,言い換えれば作詞者のもっとも意識的でない部分に確認される。 4. 今回の分析により,叙事詩の上記両韻律は,豊かなヴァリエーションを備えた古層から,しだいに各部が固定化され,形式の豊かさを失った新層へと発展していったことが確認された。 5. 今後は,さらに分析の網を細かくし,より小さい単元(マイナー・パルヴァン)ごとの変化を綿密に分析して叙事詩成立の経過を明らかにしたい。
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