本研究では、広域な地域経済圏、さらに国内統一市場の形成にとってきわめて重要な物流システムの形成と地域間相互作用、との視点から中国の地域間関係を分析した。この領域での理論と実証の研究の不足を埋めるため、また経済の市場化との関連もとらえるために、中国の市場化が進展するプロセスにおいて、物流システムの形成、そして物流システムと経済の市場化との関係を分析し、地域経済圏および全国統一市場の形成へのインパクトを明らかにするために次の4つの側面から調査を進め、市場システムの発達の理論課題に取り組んだ。1)沿江地区開発戦略の内実;2)「沿江地区」の経済的なつながり;3)成長核としての長江流域中心都市の現状;4)内陸部の経済発展のメカニズム; 本研究はつぎのことを明らかにした。第一に、新しい成長核として長江流域の中心都市、とくに長江デルタ地域の主要都市を含めて市場としても注目すべきである。第二に、地域間の産業構造が似通ったものになっていることから、さまざまなかたちで地域保護主義が存在する。しかしながら、従来にいわれたほど中国の国内市場はバラバラなものではなくなってきている。とくに長江中・下流域においては、広域市場の統合は企業の相互乗入れや道路網の整備によって急速に進む可能性もある。第三に、地域間競争と国際競争の圧力によって企業グループの形成、企業間の戦略提携や買収合併などの資産運営は中国国内の競争構造と市場構造に大きな影響を与えている。第四に、地域間物流インフラの整備、そして消費市場の拡大は内陸地域の経済を発展するためのメカニズムとしてさらに研究を深める必要性を明らかにした。
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