研究概要 |
調査環境の大きな変化の中にあって,新たな調査法として登場した電子調査法が益々注目を集めている.昨年度に引き続いて電子調査法に関連した研究を進めたが,この一年間は,様々な意味で著しい変化があった.本研究の主たる目的はインターネット環境を背景として登場したWeb調査(インターネット・サーベイ)と呼称される新しい調査法が抱える諸問題を,その数理的方法論と法的・社会的側面とから明らかにし,かつ従来方式の調査法との関連性,とくに標本調査設計(標本抽出,調査票の作成,実査の方法等)に関わる諸事項を組織的に研究することにある.とりわけ,市場調査,消費者行動,ネットワーク・コミュニケーション等の実務・応用分野では,多様かつ大量のデータベース化蓄積データの分析,電子メール・WWWホームページ等を活用したWeb調査が積極的に行われてきた.本年度は昨年度より規模を拡げた実験調査を通じて,Web調査の実態,抱える問題点,さらには実務への適用可能性等について,以下の方針で研究を進め実証的に明らかにした. 1. 実査結果に基づく検証 昨年度に実施した12回のWeb調査から取得したデータセットを用いて詳細な解析を行い,本年度の調査計画の基礎とした. 2. 調査結果の公開と社会還元 その結果を一般に公開するとともに,社会の要請に応えるべく公開セミナーやシンポジウムを自主的に行った.こうした情報公開を通じて,Web調査に対する社会の期待や関心の対象がいかなる事にあるかを具体的に把握することを行った. 3. Web調査の分類と新たな調査方法の確立 こうした行為を通じて,Web調査の実態を3つの型(パネル型,リソース型,オープン型)に類型化し,さらにこれを調査法としていかに確立すべきかの調査計画を具体的に立案し,実査を通じて検証することを行った. 4. 独自の調査設計と調査の実施 昨年度の経験を生かして,調査協力機関を複数とすること,各機関での実査時期を揃えること,同一の調査票を用いること,従来型調査(オムニバス等)との併用等,国内では初めてと思われる独自の調査計画を立案し,これを実施した. 5. 調査結果の比較検証方法の独自性 独自の調査計画を適用した結果,従来は明らかでなかったWeb調査の特徴が,より顕在化し,調査環境間の類似や差異を客観的に評価することが可能となった. 6. 法制的問題,プライバシー問題等の検討 とくに,Web調査特有の問題とされるプライバシー,匿名性,情報操作の問題,社会的・政治的メディア(種々の社会的問題,生活態度,政治意識.地域・環境問題等),パソコン通信利用面の諸問題(商用ネット,公的情報の秘匿性)等の多くの課題に注目して,これについての調査回を特別に設けて実施した. 7. 調査結果の解析方法の開発 取得データ,とくに自由回答データと従来型設問・属性データの併用を可能とするような独自の統計システムを開発し,実際に取得データに対して適用を試み,その効用を検証した.
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