研究概要 |
最近、学習障害児(LD児)において、眼球運動障害、聴覚認知障害が報告されている・平成10年度は、聴覚認知を検討しするために、ミスマッチ陰性電位(MMN)を用いた。音刺激系列に注意を払っていないときに、2種類の音を、一方を高頻度に他方を低頻度でランダムに提示しそれぞれの音に対するERP(event related potential)を得ると低頻度刺激によるERPから高頻度刺激によるERPを減じることによりMMNを得ることができる。MMNは被験者が音刺激への注意に関わらず出現することから脳における受動的な定位反応であると考えられている。文部省の規定したいわゆるLD児9名と対照群として10名の健常児にたいして次のような課題を行った。防音室内で坐り、ビデオを見せながらヘッドホーンにより高頻度(85%)の標準刺激と低頻度(15%)の逸脱刺激を与えた。それらは、(1)純音1000Hzと1050Hzのペア、(2)言語音刺激として/ba/wa/,(3)/da/ga/の3条件とした。被験者はビデオに集中し、提示される音の相異には注意を払わないようにしていた・EEGをFz,Cz,Pz,C3,C4から導出し加算処理した。総平均波形を見ると、両群でMMNの出現が3条件とも見られた。対照群では潜時は、/ba/wa/、純音、/da/ga/の順であったが、LD児群では/da/ga/の遅れが著明であった。MMNの平均振幅は、/da/ga/で対照群よりも低下していた。この傾向は注意欠陥多動障害(ADHD)の既往のあるLD児で著明であった。これらの結果は、LD児で/da/ga/の言語音の識別の困難性を示している。健常児では、年齢の発達とともに/ba/wa/,/da/ga/の識別がバランスよく発達しているのが見られたのに対してLD児群では、年齢との相関は全く見られなかった。
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