研究概要 |
日本の聴覚障害児教育において,最も広く行われている教育は,障害を早期に発見し,補聴器使用を促し,読唇・口話を行っていこうとするものである。しかし,結果的に見るならば充分な読唇・口話が習得できないまま学校教育を終了し,途中から必要にせまられて手話によるコミュニケーションに移行する場合が極めて多い。 筆者らは,fMRIを用いて,読唇・口話に使用される領野と手話に使用される領野を明らかにすることで,手話・口話の学習に関する問題にアプローチしてきた。その結果,聴覚障害者の読唇では前頭連合野から運動連合野にかけの部位(Brodman Areas44・6・9・32)と側頭連合野(21・22・37)に,健聴者の読唇では,前頭連合野から運動連合にかけての部位(6・9・32),側頭連合野(22・37・42),頭頂連合野(7・40),後頭連合野(17・18・19)に顕著な特徴が見られた。一方,聴覚障害者の日本手話では前頭連合野から運動連合野にかけての部位(44・46・6・9)と側頭連合野から後頭連合野にかけての部位(21・22・37)に特徴が見られた。また,健聴者の場合には聴覚障害者の場合に加えて頭頂連合野(7)に特徴が見られた。この結果,手話と口話のいずれも類似した領野を使用していることがわかった。
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