研究課題/領域番号 |
10114212
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 和生 京都大学, 文学研究科, 助教授 (80183101)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1998年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 初期知識 / 認知発達 / 素朴物理学 / 乳児 / 霊長類 / 生物的運動 / 因果認識 / コミュニケーション |
研究概要 |
ヒト乳児は外界に関する種々の複雑な知識を数ヶ月齢から示す。例えば、ヒトの頭部や関節に光点をつけて闇の中を歩かせると、我々はその光点の動きが即座にヒトであると認識するが(生物的運動)、同様の知覚が乳児にもある。物体は衝突されない限り勝手に動き出さないことを乳児は知っている(衝突における因果関係)。いずれも論理的には例外のあり得る現象だが、多くの場合に当てはまるこのような解釈をすることにより、外界をより容易に知ることができる。これは一種の自然法則の認識である。本研究ではこれらの知識の系統発生を調べることから、ヒト乳児がなぜ早期にこれらの知識を示すのかを探っている。マカカ属のサルの乳児に、上述の知識を調べるためのビデオ映像を提示し、凝視時間を測定した。4〜8ヶ月齢のサルにヒトの生物的運動を見せると、倒立にして提示した場合やでたらめな配置にした場合よりも長く見ることがわかった。しかしサルの生物的運動ではそれは見られなかった。テストしたサルは人工環境で飼育されているのでサルの運動を見ることはほとんどない。すなわち、生物的運動の認識には、実際の運動を見る経験が重要だと思われる。衝突の因果関係の認識を調べるために、物体Aが物体Bに衝突されて動き出す場面と衝突を受けることなく勝手に動き出す場面のビデオを見せた。8〜12週齢のサル乳児は、衝突がなかった場合には驚いてそれを長く凝視し、物体衝突の因果関係は理解されているようであった。ヒトの乳児でも同様であったが、衝突するものがヒトどうしである場合、ヒト間に視線が共有されている場合には、ヒトが自発的に動き出す事象に8ヶ以上の乳児は驚かないことがわかった。この月齢のヒト乳児には、ヒトの動きの因果性とものの動きの因果性が、視線の共有、あるいはコミュニケーションの可能性という観点から分離されていることがわかった。
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