研究概要 |
平成10年度は,主に,日本海の海底堆積物試料について,最終氷期の縞状構造(ラミナ)の高分解能解析を行った,第1に,ラミナの層準の詳細な検討行い,第2に,ラミナの粒子密度,構成粒子種類などを反映した色調画像・軟X線画像を,デジタル人力・処理を行い,1次元濃度変動としてmmオーダーの縞状構造を非破壊連続計測し,第3に,走査型電子顕微鏡によってラミナの構成粒子を観察した.また,数ミクロンオーダーの画像情報と等価な元素,鉱物組成などの非破壊機藷分析を行うために,湿潤状態の堆積構造を乱すことなく特殊乾燥する前処理手順を実験的に検討した,本年の研究成果は,以下の4点にまとめられる. 1.GH92-703コア(大和海盆;水深約2600m)は,火山灰・花粉化石層序,AMS年代測定などから,過去約8万年間の連続堆積記録で,数千年スケールの地球規模の気候変動に対応して暗色層が堆積する. 2.最終氷期最寒期付近には,厚い暗色層が堆積し,5層準にラミナが認められる.詳細に検討すると,塊状シルト(暗色,粗粒,低有機炭素・硫黄量,高炭素/硫黄比,高炭素/窒素・無機炭素・アルミニウム量)と縞状堆積物(明色.細粒子.高有機炭素・硫黄量,低炭素/硫黄比.炭素/窒素比,低無機炭素・アルミニウム量)が交互に繰り返しながら,厚い塊状泥岩に移行し,再度,塊状シルトとラミナの繰り返しとなり,海水準変動に呼応した底層水の還元度の変動を示唆する. 3.明暗ラミナー組は,有孔虫・放散虫などの海洋表層プランクトンの遺骸(軟X線淡画像)と,粘土鉱物などの砕屑物質(軟X線濃画像)から構成される. 4.軟X線画像から生成した1次元デジタル画像データの空間スペクトル解析から濃淡ラミナ1組の厚さは2.08mm,0.77mmに顕著なピークをもち.平均堆積速度がら計算するとこの縞は年〜4年周期の変動であると算出される.また,数枚の濃淡ラミナが1オーダー上のリズムを形成している.従って,最終氷期には明瞭な年オーダーの変動が存在する.
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