研究概要 |
今年度は.東京都の縄文時代中期の中里貝塚,福岡県北部の縄文時代及び弥生時代の貝塚,さらに内湾性の貝類の生態分布を山口県瀬戸内海側と外洋性のものを高知県宇佐市で現地調査を実施した.また,これまでのサンプルの分析も平行して実施した. その結果,遺跡から出土する貝類の正確な同定と計測を行い、その種の生息場所や生態等の情報を加えて、人間による自然環境の利用を検討した。取り扱ったテーマは、1)日本人に特徴的な海藻・海草利用の縄文時代の起源、2)北部九州における縄文時代と弥生時代の遺跡周辺の自然環境の改変、3)沖縄における貝類資源の場所利用の特徴、4)旧石器時代の貝塚調査の可能性、の4点である。1では東北地方の縄文時代後期の貝塚から海藻・海草に付着する微小海産貝類が得られ、この時代から利用されていたと考えられた。2では、弥生時代には縄文時代と比較して、人々は里山の林を一挙に改変してしまうと考えられた。3では、先史時代の沖縄においてはサンゴ礁を貝類資源利用の場として自ら選択的に用いていたと考えられた。4では、豊後水道の約100mの海底から、縄文時代の貝塚の主要構成種で河口に生息するヤマトシジミ等の化石が得られ、旧石器時代の貝塚調査の可能性が示唆された。
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