研究概要 |
大質量星(>10M_<【of sun】>)は巨大分子雲で誕生し、10^7年で一生を終えII型超新星爆発をおこす。超新星残骸は、生みの親である巨大分子雲と相互作用し、宇宙線を加速することが1950年代から予想されていた。これまでにミリ波CO(J=1-0:115GHz)での探査がおこなわれてきたが、超新星残骸と分子雲の相互作用が確実に検出された例はこれまでにIC443だけである。分子雲のなかで超新星残骸によって圧縮された高温(〜100K)・高密度(〜10^5cm^<-3>)のショック領域はサブミリ波CO(J=3-2:345GHz)の観測が適している。低温(10K)の分子雲の速度分散による影響が少なく、ショック領域からのウイング状の放射がサブミリ波で強調されるからである。しかしながら、サブミリ波受信機の製作が困難であったこと、及び、大気吸収のため地上での観測が高所かつ寒冷地に限られていることなどから、サブミリ波での観測領域が非常に限られていた。我々は、IC443,W28,W44,γ-Cygniなどの超新星残骸がガンマ線衛星のEGRET検出器(30MeV〜10GeV)で検出されたことに着目している。超新星残骸と分子雲の相互作用によって宇宙線が加速されているのではないかと考え、JCMT鏡でW28のプロポーザル観測をおこなった。サブミリ波COの観測をおこない、予想どうり、超新星残骸と分子雲の相互作用を検出することに成功している。相互作用領域では分子線はウイング状(ΔV〜70km/s)のスペクトルをしめし、その外側では通常の分子雲と同様の線幅(〜1km/s)のプレショックガスの存在を明かにした。 我々は富士山頂がサブミリ波観測に適したサイトであることを2年間にわたり実地検証し、日本で初めてサブミリ波(>300GHz,<1mm)観測が可能な富士山頂サブミリ波望遠鏡(口径1.2m)、を製作し、1998年秋より本格的運用を開始した。富士山望遠鏡でサブミリ波COの銀河面の広域観測をおこなうことによって超新星残骸と分子雲の相互作用の探索をおこなっている。
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