X線天文衛星「あすか」を用いて高エネルギー天体の観測とデータ解析を行なった。研究対象天体は小マゼラン星雲で突発的に明るくなったパルサーと南天に位置するいくつかの銀河系内超新星残骸(SNR)である。 小マゼラン星雲パルサーは、1997年秋頃からアメリカのRXTE衛星により次々と新しい天体がみつかって来た。「あすか」ではこのうちのいくつかを追観測し、誤差1分角以下の位置決定および1kev以下からの広いエネルギー範囲でのスペクトル及びパルス特性の解析を行なった。これにより、パルサーの正体と考えられている中性子星連星系での降着物質へのエネルギー付与およびその周辺の構造に関して一定の制限を与え得るデータを得た。 SNRに関しては、衝繋波加速で生じるTev領域の電子からのシンクロトロン放射の探索を目的として、数個のシェル型SNRの解析を行なった。その結果、G272.2-3.2と6312.4-0.4からは通常益の熱プラズマ成分として見られる放射に加え高エネルギー側での放射を検出した。これらの硬X線が非熱的電子起源の物であるかは確認するに至っていないが、将来のより高エネルギー側で高感度な検出装置による観測およびCANGAROO望遠鏡によるTeV領域でのガンマ線の存在の有無の確認により決着が付けられると考えられる。
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