研究課題/領域番号 |
10120208
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
幸田 清一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10011107)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1998年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 多自由度トンネル / 希ガス結晶 / 自立型結晶 / 硫化水素光分解 / 重水素効果 / ケージ効果 / トンネル効果 |
研究概要 |
1. 本研究は、希ガス結晶における水素、重水素原子の化学反応と拡散の過程を実験的に追跡し、多体相互作用の場において進行するトンネル効果に関する知見を得ることを目的とする。このために、H_2Sなどをドープした自立した結晶を作成し、レーザーによる選択励起によって固体中に原子種を生成させ、その消滅過程、生成物の生成過程を赤外分光やレーザー分光の手段によって追跡する。本研究の実験的方法の特色は、自立した結晶をレーザー励起し、光学密度を上げ、極低濃度の化学種の追跡を可能とすることにある。結晶構造特有の場が反応や、拡散過程に及ぼす効果を明らかにすることができる。 2. H_2Sを少量含む希ガスを既存の自立結晶作成装置へ導き、透明な自立結晶を作成した。赤外吸収スペクトルの解析により、低濃度の結晶ではH_2Sは単離された状態と2量体などとして存在することを明らかにした。220-260nm範囲の波長のレーザー光で励起することによって自立結晶のケージ中でSH+Hに解離させた。H_2Sの解離は、その赤外吸収の減衰から260nm近辺まで認められ、一方、SH、およびH原子の生成は、250nm以下で認められた。この結果は、光吸収解離に伴う過剰エネルギーが、あるしきい値以上のケースのみ水素原子がケージのポテンシャルから抜け出るとするモデルで解釈できる。モデル計算で得られるケージのポテンシャルの障壁高さに比べて、より低いエネルギーを有する水素原子が一部ケージの外へ表れている可能性があり、何らかのトンネル現象が関係している可能性を示した。また対応するD_2Sについても検討を進め、水素原子と重水素原子の挙動の差を示した。
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