研究概要 |
超塑性5083Al合金を超塑性引張変形を与えた際,歪量の増加に伴い平均陽電子寿命は増加する。2成分解析した結果,歪量0.6より小さい範囲では,欠陥成分の相対強度に大きな変化がなく,欠陥における陽電子寿命も約240psで一定である。0.6より大きい歪量では,陽電子寿命は210pSに低下し,一方相対強度は急激に増加し80%近くに達する。この結果から,超塑性変形により導入された粒内の格子欠陥に多数の陽電子が捕獲される様になったために平均陽電子寿命が増加したと推定できる。 超塑性変形を加えた試料は,400K付近で完全に回復しており,超塑性変形により導入された粒内の格子欠陥は,空孔と同程度の熱安定性を有している。また,超塑性変形により導入された粒内の格子欠陥を完全に回復させると,超塑性変形を全く加えていない試料とほぼ等しい陽電子寿命を示すことは興味深い。この結果は,相当な歪み量まで超塑性変形を加えても,平均すれば,各粒界に存在する自由体積の大きさは,変形前と比較して,ほとんど増加していないことを示している。言い換えると,5083Al合金の超塑性変形においては,ほとんどの粒界は健全であり,極一部のある特定の粒界にのみキャビティが発生することを示している。
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