研究概要 |
宇宙・航空機用,自動車用など各種エンジン用の新しい耐熱構造材料として,現在最も有力な候補材の一つにTi-Al系金属間化合物のTiAl合金(Ll_0型,γ相)がある.しかし,この材料は耐酸化特性が必ずしも十分でない.従ってTiAl合金の本格的な実用化を達成するためには耐酸化性皮膜をコーティングしたり,あるいは耐酸化性部材を接合するなどして使用する必要がある.一方,Ti-Al系金属間化合物の中に,きわめて優れた耐酸化性を有するAl_3Tiが存在するが,Al_3Tiは複雑な結晶構造(正方晶系,DO_<22>型)であるためきわめて脆性的であり,TiAl合金に対する耐酸化性物質として適用できない.そこでAl_3Tiの複雑な結晶構造を第三元素を添加する方法で単純な結晶構造に改変する研究を行ってきた.この結果,Cr,Mnなどの遷移元素を添加することによって,DO_<22>型構造が立方晶系のLl_2型構造になることを見出した.さらに,Ti-Al-X(X=Cr,Mn)系におけるLl_0型およびLl_2型合金は平衡して存在できるだけでなく,両相はきわめて類似した結晶構造を有していた.従って,Ll_2型合金をTiAl合金に対する耐酸化性物質として,保護皮膜あるいは接合部材として使用できる可能性がある.本研究は,Ti-Al-Cr,Ti-Al-Mn系におけるLl_0型およびLl_2型合金の相平衡関係を明らかにし,両相の接合状態と拡散層における組成および組織の傾斜化を調べた.この結果両者はきわめて良好な状態で接合した.Ll_0/Ll_2境界面は拡散層のほぼ中央に形成され,Ll_0型合金側の拡散層はAl-richな連続した組成のLl_0単相状態であった.一方,Ll_2型合金側の拡散層はLl_0相が微細に整合析出した二相状態を形成した.これによってこの拡散層の組成と組織は連続的に変化した.また,各種組成のLl_0型,Ll_2型およびLl_0/Ll_2二相合金を作製して線膨張係数ならびに耐酸化性を測定したところ,線膨張計数は拡散層の間でほぼ連続的な変化を示すとともに,Ll_2相とLl_0/Ll_2二相合金がきわめて良好な耐酸化特性を示した.以上から,本実験で得られた拡散層は組成および組織の良好な傾斜化と合わせて熱膨張係数と耐酸化性についても十分な特性を示すと考えられた.
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