研究概要 |
東南アジア産土生姜(Zingiber Zerumbet Smith)から得られる11員環セスキテルベンゼルンボン(1)の骨格変換による種々の天然物骨格の構築を検討した。その結果,渡環反応や骨格再配列によるb1cyclo[6.3.0]undecane,bicyclo[5.4.0]undecane,bicyclo[5.3.0]decane骨格が構築できた。また,これら合成研究に必要である有機単位反応の開発も合わせて行った。本研究の主な結果を以下に示す。 1. ゼルンポン(1)誘導体の渡環反応に関する検討 1は,触媒量のTBAF存在下,PhSHまたはPhSeHと1位で選択的に反応し,それぞれシン体-スルフイド(2a)およびシン体-セレニド(2b)を与えた。さらに,得られた2aおよび2bは触媒量のBF_3存在下,過剰量のトリメチルシリルシアニドと反応し,それぞれ5位付加体3aおよび3bを与えた。このうち3bは,過酸と反応させることで容易にセレノキシド脱離を起こし,1位-Z体の共役エノンを与えた。さらにこれを過酸と反応させ,8,9位をエポキシ化した後塩基と反応させたところ,ゼルンボンの4位-8位間で渡環が起こった。このようにして得られた渡環生成物をさらに変換することで3環状天然物ヒルステン合成前駆体のbicyclo[6.3.0]undecane骨格に導けることが明かとなった。 2. ゼルンボン骨格の新規変換反応 1は,カルボニル基の還元,アセチル化に続くパラジウム触媒による異性化と脱保護,酸化をへて,ゼルンボンの異性体4に変換できた。次に,この4を2当量の四塩化チタンと低温で反応させたところ,isodaucane (bicyclo[5.3.0]decane)骨格を有した5が収率50%で得られた。この骨格は天然物アファナモール類の基本骨格であり,それらの合成前駆体になりうる。
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