研究概要 |
1,l-ジブロモアルケンをパラジウム触媒下にスズヒドリドにより加水素分解を行って立体選択的にZ-プロモアルケンやZ-プロモジエンを導き、そして、これらをパラジウム触媒下にクロスカップリング反応をさせてZ型ポリエン化合物やエンイン化合物を合成した。これらのアルケニルボロン酸末端sp2炭素及びアルキン末端sp炭素とのカップリング反応に加えて、アルキル末端sp3炭素とのカップリング反応を起こすことが可能ならば、炭素鎖の共役したZ型ポリエン類の合成の利用限界が更に拡大される。 ニッケル触媒下におけるハロアルケンとグリニヤール試薬との反応は熊田・玉尾反応として知られているが、炭素鎖が共役した幾何学的に純粋なlZ-ブロモアルケンに熊田・玉尾反応を起こさせれば、炭素鎖が共役した二置換Z-アルケン類の立体特異的な合成法となる。 そこで、いくつかのアルケニル、アルキニルおよびアリール置換Z-プロモアルケンにNi(dppp)を触媒としてメチル、エチルおよびアリルグリニャール試薬を反応させたところ、良好な収率で対応するZ型アルケンが得られた。またグリニャール試薬としてトリメチルシリルメチルマグネシウムクロリドを用いたところ炭素鎖が共役したZ型アリルシランが収率よく得られた。ボンビコールは蚕蛾(bombyxmon)の雌が出す雄に対する誘引化学物質であり、最初に発見された性フエロモンである。その構造は炭素鎖16の高級アルコール中に共役したE,Z-ジエン構造を有する。本化合物も上記の方法で不飽和アルデヒドからE,Z-プロモジエンに導き、プロピルマグネシウムブロミドとPd触媒を用いる熊田・玉尾反応を行うことにより効率的かつ幾何学的に純粋にボンビコールを合成することが出来た。
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