研究概要 |
当グループが開発したオレフィン環化反応剤水銀トリフラートの特質を最大限に活用し,抗腫瘍性ジテルペン誘導体タキソールの合成研究を展開した.ホモゲラニルアセテートの環化反応により高収率高選択的なタキソールA環の合成に成功し,側鎖の導入,ついでC-3位ケトンと末端アルデヒド基で12員環合成を行った.かくて効率的に合成したビシクロ[9.3.l]ペンタデカトリエンの12員環のコンホメーション解析をCONFLEXのプログラムによって実行し,望ましいアップアップのコンホーマーを優先する基質を見いだした.光延反転により合成したトリエンの水銀トリフラートによる渡環反応の試みは,予想し得ない非常に珍しい転位反応-渡環反応生成物を与え,その反応機構の解析を行いTetrahedronLetters誌に発表した.引き続いて,12員環カチオンのコンホメーション解析を行い,カチオンの制御によるルートでのタキサン骨格構築に向けて前進している. 一方,エポキシスクワレンの環化反応の中間体である二環性トリテルペンアルコールを水銀トリフラートによる環化反応で合成し,これからステロイド生合成の中間体に相当するカチオンを発生させる.その行く先を徹底して追跡し,X線解析を用いてカチオンの命運を見定めることにより,オキシドスクワレンの環化反応の残された謎に挑む研究を展開してきた.その結果,C環形成に際して,まず生成する6/6/5の三環性カチオンが酵素のない条件でも生合成同様に選択的に生じることを示し,従来6/5トランスは不利であるという迷信を打破した.ついで,六員環C環へのanti-Markovnikov環拡大が酵素なしに起こるかどうかに挑み,ある特殊な条件下にはこれが可能であることを見いだした.
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