研究概要 |
前年度までは、低収率でしか生成物を得ることのできなかった1,3-ジメチルトリメチレンカーボネート(1,3-DMTC)の単独重合が、希土類錯体Cp^*_2SmMe(THF)を開始剤とし、開始剤濃度の比較的高い条件下で重合を行うことにより、ほぼ定量的に進行することを明らかにした。モノマーに光学活性な1,3-DMTCを用いることにより、分子量数万程度のキラルなポリ(1,3-DMTC)を得ることができた。 さらにこのキラルなモノマー(1R,3R-あるいは1S,3S-DMTC)とカプロラクトン(CL)との共重合を試みた。開始剤として同じくCp^*_2SmMe(THF)を、やはり比較的高濃度になるような条件で共重合を行うと、高収率で共重合体が生成した。共重合体中の両成分の組成比は、モノマーの仕込み比により制御することが可能であった。分子量数万程度で分子量分布1.1-1.5の共重合体が得られた。これに対して1R,3R、1S,3S、1R,3Sのジアステレオメリックな混合物をモノマーとして用いた場合は低収率でしか共重合体は得られず、しかも生成物の組成比をモノマーの仕込み比で制御することもできなかった。 カプロラクトンに1,3-DMTCユニットを共重合によって導入することにより、ポリCLに比べて、共重合体のガラス転移温度を上昇させることができた。しかし、共重合体の融点は1,3-DMTCユニットの導入によって低下する結果となった。 共重合体の生分解性を調べたところ、1,3-DMTCユニットの導入率が30%以下のものは良好な酵素分解性を示した。1,3-DMTCユニットの立体構造の違い(1R,3Rあるいは1S,3S)による顕著な酵素分解性の差は見られなかった。
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