研究課題/領域番号 |
10126246
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久枝 良雄 九州大学, 工学部, 教授 (70150498)
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研究分担者 |
嶌越 恒 九州大学, 工学部, 助手 (00284539)
林 高史 九州大学, 工学部, 助教授 (20222226)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1998年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 合成二分子膜 / ペプチド脂質 / ナノ組織体 / 疎水性ビタミンB12 / コバルト錯体 / 異性化反応 / アルギニン / かご効果 |
研究概要 |
アミノ酸残基を導入した合成ペプチド脂質は水溶液中で会合し、直径400〜800Aの極めて安定な二分子膜ベシクルを形成する。この二分子膜は、疎水性相互作用とアミノ酸残基間の水素結合により会合したナノ組織体である。本研究では、この二分子膜に金属錯体を組み込み新しい触媒系の開発を行った。 ビタミンB12依存性酵素のX線構造解析が最近報告され、ビタミンB12分子にはタンパク中のアルギニンが基質と相互作用していることが明らかとなった。そこで、二分子膜型ビタミンB12人工酵素の構築分子としてアルギニン残基を有する合成ペプチド脂質を合成した。さらにビタミンB12を二分子膜ベシクル中に取り込むために、ビタミンB12の側鎖のアミド結合をエステル結合に変換した疎水性ビタミンB12を合成した。アルギニン残基を有する合成脂質はアラニン残基をもつ人工脂質と水中で均一に混合し、安定な二分子膜ベシクルを形成した。これらの合成ペプチド脂質と疎水性ビタミンB12との組み合わせにより二分子膜型B12人工酵素を構成し、炭素骨格組み替え反応を行った。 基質が軸位に結合した疎水性ビタミンB12をメタノール中に溶解した場合、光照射しても異性化生成物は全く生成しなかった。一方、アラニン残基をもつ人工脂質が形成する二分子膜中では2-5%、さらにアルギニン残基をもつ人工脂質を混合すると15%をこえる異性化生成物が得られた。このことから、二分子膜の反応場効果および基質と相互作用するアミノ酸の存在が重要であることが明らかとなり、この2つがともに働く場合に異性化反応が進行しやすいことを見出した。この結果は、天然酵素においても、炭素骨格組み替え反応には基質と相互作用するアルギニン残基と、アポタンパクが提供するミクロ環境が重要な影響を及ぼしていることを示唆している。
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