研究概要 |
本研究では、種々の置換基を持つビナフトールを基本骨格とするポリカーボナートの合成とその高次構造について検討した。ビナフトールの6,6'-位へ種々のアルキル置換基、各世代のデンドロンユニット、さらに、クラウンエーテルの導入を行なった。これら新規ビナフトール誘導体のうち、アルキル置換およびデンドロンユニットを導入したものは、常法にしたがってポリカーボナートへと導いた。3,3'-位にかさ高いトリメチルシリル基を有するビナフトールからはポリカーボナートが得られず、かさ高いトリメチルシリル基は重合を阻害することを明らかにした。6,6'-位にアルキル置換基を持つポリカーナートは、無置換のポリカーボナートと同様、重合によりCDスペクトルの符号の逆転が見られ、置換基によらず熱的に極めて安定ならせん構造の形成が確認された。特に直鎖の長鎖アルキル基を持つポリマーでは、昇温時、0℃近辺にピークを持つ幅広い吸熱を示し、らせん外周上での官能基の相互作用が示唆された。6,6'-位にデンドロンを導入したポリカーボナートでは、重合度が上がるにつれてCDスペクトルの長波長シフトと符号の逆転が連続的に観察され、側鎖間の立体的な込み合いにより、主鎖のらせん構造が影響を受けている様子が観測された。6,6'-位にクラウンエーテル構造を導入したビナフトールについては、ウラウンエーテル間の協同効果について予備的に調査するために、α,ω-ジアンモニウム塩との鎖形成挙動を検討したところ、アンモニウム塩間の距離が一定値に達すると安定した鎖形成を示すことが明らかになった。このことから、新たならせん構造制御の可能性が示唆された。
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