| 研究概要 |
耐震設計に用いられる入力地震動評価のために,応答スペクトル予測式が数多く開発されてきたが,これは震源近傍には適用できない.一方,地震学の分野で震源近傍にも適用できる強震動予測手法が数多く開発されているが,これらは時刻歴波形やフーリエスペクトルを予測するもので,現在の耐震設計の枠組みの中に直接組み入れることが難しい.本研究では,断層の広がり,震源放射特性,震源指向性,伝播経路における減衰の周波数依存性,経験的に求めたサイトを考慮して,震源近傍の地震動の振幅フーリエスペクトルと,位相特性を表わす群遅延時間スペクトルを予測する手法を開発する.さらに,地震動の位相特性を考慮してフーリエスペクトルを応答スペクトルに変換する手法を開発することによって,震源近傍の応答スペクトルを予測することが最終目標である.
以下に本研究で得られた成果を列挙する.
(1) 速度サーボ型地震計記録を用いてインバージョン解析を行い伝播経路・サイト特性を分離し,伝播経路およびサイトの群遅延時間スペクトルを経験的に評価した.
(2) 伝播経路特性について,波線理論とエネルギー理論を組み合わせた方法で解析し,異方散乱特性と内部減衰を考慮することにより,(1)で得られた特性を表現できることを示した.
(3) 地点特性における散乱波の影響を調べるために,反射・透過係数法とPhase Screen methodを組み合わせることにより,境界の不規則性による影響と,地盤材料の不均質性による影響を調べた.
(4) 震源の位相特性をモデル化する確率インパルスモデルを提案した.
(5) 位相スペクトルの短周期特性と長周期特性を関係づける方法を見いだした.
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