研究概要 |
本研究では都市震災を想定した都市の複合的な災害リスクポテンシャルの分析・評価を目的とするとともに、そのための科学的方法論の開発を行った。まず,都市のリスク場における人間の諸活動の分布を、生き物としての人間同士の「棲み分け分布のパターン」として捉えることにより、生態学的な分析アプローチを適用することが有効であろう。そこで,具体的分析手法としてニッチ分析手法を用いた。大阪都市圏のいくつかの地域における「活動リスク」や「場のリスク」の空間的分布を分析し,同地域における地震のリスクを人間活動を考慮して定量化する方法を提案した.その結果,若年層や高年齢層といった災害弱者が相対的に高いリスクにさらされているという状況が明らかとなった.ついで,都市のリスク場において居住地を選択する住民のリスク認知行動を、ミクロ経済学的モデルとして捉えハザードに関わる情報の質がその立地行動に及ぼす影響を評価するアプローチが有効であることを示した。都市経済学の知見を援用した居住地選択立地行動モデルとして定式化し分析を実施した。活断層の存在などの自然的な条件に加えて,都市における市街地の分布が「場のリスク」を規定する重要な要因であり,その適切な誘導が「場のリスク」を軽減するために有効な方策であることを考慮して,情報提供や災害保険等の手段による土地利用の誘導方策に関して都市経済学的手法を用いた分析を行った. 本研究によって得られた成果は、別紙論文リストに示すように国内(第3回都市直下地震災害総合シンポジウム,土木計画学研究発表会,日本リスク学会等)および海外(The First China-Japan Conference on RiskAssessment and Management at Beijing,China等)の学会等で発表するとともに,京都大学防災研究所年報や土木計画学研究・論文集への投稿を行っている.
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