本研究では、これまで多くの研究者により脱窒機構解明のモデル生物として研究されてきたPseudomonas aeruginosaからcb型NO還元酵素を精製し、その酵素的性質を明かにすることを試みた。グルタミン酸を炭素源とする合成培地で嫌気条件下に培養した菌体を超音波破砕し、細胞質膜を高度に精製した。NO還元酵素を可溶化するために種々の界面活性剤を検討したところ、TritonX-100でも本酵素のNO還元酵素活性を保持したまま可溶化できることを見い出したので、本酵素の精製はすべてTritonX-100存在下に行った。NO還元酵素を1%TritonX-100で可溶化後、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過により精製を試みた。その結果、湿重量100gの菌体から電気泳動的均一な酵素標品を約19mg得ることに成功した。本酵素は、heme b/heme c/非ヘム鉄を含むcb型酵素であり、2種類のサブユニットから構成されていた。本酵素がNO以外にO_2を還元するか検討したところ、ウマチトクロムcを電子供与体にしてO_2を4電子還元し、さらにそのKi(KCN)は約1mMであった。本研究によりcb型NO還元酵素が一般的に酸素還元能を持つことが強く示唆され、「cb型NO還元酵素の複核金属中心にはもともと酸素還元能が備わっており、非ヘム鉄から銅へ置換は本酵素の酸素に対する親和性を増す結果となり、そのことにより低濃度の酸素環境下でも機能できる酸素還元酵素が生じた。」とする新しい仮説が提案された。
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