研究概要 |
鉄型二トリルヒドラターゼ(NHase)のX線結晶構造解析から、鉄のリガンドであることが判明している3つのシステイン残基に相当する(Rhodococcus rhodochrousJlの)コバルト型NHaseのαサブユニットにおける107Cys,105Cys,102Cysの機能を解析した。すなわち、これら3つのシステイン残基をアラニンに部位特異的変異法により置換することで、合計7種類の変異酵素(107,105,102,107/105,105/102,107/102,107/105/102)に対応する各遺伝子を作製した後、宿主Rhodococcus rhodochrous ATCC12674に形質転換し、発現させた。これらの変異酵素は無細胞抽出液レべルで全てNHase活性を示さなかった。SDS-PAGEによる検討の結果、4種(107,105,107/105,105/102)はNHase変異酵素を発現し、残り3種(102,107/102,107/105/102)は対応するNHaseタンパク質を産生しなかった。107,105,107/105,105/102の4種類のNHase変異酵素の性質を解析すべく、精製を試みた。無細胞抽出液の調製、硫安分画に続き、DEAE-Sephacel、Superdex200、Phenyl-SepharoseCL-4B、Mono-Qにより均一な各変異酵素標品を得、諸性質を検討した結果、いずれの変異酵素においても、野生型のH-NHaseでみられるコバルトに由来すると考えられる420nmの吸収極大はほとんど認められなかった。2アミノ酸置換の実験結果から、102Cysあるいはl07Cysのどちらかが存在すればNHaseタンパク質が生成すると言えるのに対し、1アミノ酸置換の実験結果からは、102CysがNHaseタンパク質生成に重要な残基であることが示唆された。これらの結果から、いずれのシステイン残基もNHase活性発現にとって重要であることが判明した。 さらに、NHaseの反応機構として2種類のモデルを提唱した。すなわち、OH^-(あるいは金属に結合した水分子)に基質であるニトリルが接近し、続いて、OH^-(あるいはOH^-の塩基としての作用によって活性化された水分子)がニトリルの炭素原子を求核攻撃しイミド酸を生成し、最終的にアミドに変換される。
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