研究概要 |
呼吸鎖酵素における結合型ユビキノンとその結合環境との相互作用を原子レベルで観察する有効な測定手段はいくつか考えられるが、^<13>C-標識ユビキノン類を用いた共鳴ラマン分光法は強力な測定手段である。本研究では、上記二つの酵素における高親和性結合型キノンと結合部位との相互作用を原子レベルで詳細に観察するための共鳴ラマンスペクトル測定を可能にする^<13>C-標識ユビキノン類の有機合成を目的として研究を行った。 目標化合物として、キノン環上の2位および4位のカルボニル炭素がそれぞれ特異的に標識されたUbiquinone-2類縁体(1-^<13>C-Q_2および4-^<13>C-Q_2)を設定し、K^<13>CN(Aldrich,99%)を出発原料とするvanLiemtらの方法をもとに合成した。反応のキーステップであるbis(trimethylsilyloxy)methylfuranと1,1,2-trichloroethaneとのディールスアルダー反応では、嫌気条件を厳密にし、至適反応温度を120℃(反応時間48時間)に設定することにより反応収率を改善した。 得られたキノンのタンパク環境におけるラマンスペクトルの帰属・解析を精確にするためには、各種有機溶媒中における両カルボニル基のスペクトル特性を充分に理解しておく必要がある。そこで、モデル化合物として側鎖を持たず、かつ分子が非対称的なUbiquinone-0類縁体(1-^<13>C-Q_0および4-^<13>C-Q_0)をそれぞれ同様の方法により合成した。合成した化合物の構造は、NMR(^<13>C,^1H)スペクトルおよび元素分析により確認した。^<13>C-NMRスペクトルでは、標識された炭素に相当するピークのみが顕著に強いシグナル強度を与え、^1H-NMRスペクトルでは、標識された炭素に由来する位置にのみ^<13>C-^1Hカップリングが観察された。
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