研究概要 |
酸素発生系Mnクラスターの磁気構造解析: 第1段階として、EPRマルチライン信号の磁気的性質とXAFS実験から報告されているMnクラスターの性質を考慮して、一般的なMn4核錯体の可能な磁気相互作用の全ての組み合わせについて数値計算を行い、クラスターが示す磁気的性質(S_2状態)を満足する磁気構造を抽出した。 第2段階として、4核錯体の各Mnの酸化状態と有効的超微細結合テンサー(Ehfc)をより正確に決定するため、薄膜上に配向した光化学系II膜断片についてチラコイド膜法線方向にたいする角度依存性S_2マルチラインスペクトルを精密に測定し、得られた角度依存性スペクトルについてMn(III)イオンの異方性を考慮にいれた非線形最小2乗法によるシュミレーション解析を行った。酸化状態はMn(III-IV,IV,IV)、EhfcはMn(III)が8.56×10^<-3>cm^<-1>、Mn(IV)が3.70×10^<-3>cm^<-1>、8.07×10^<-3>cm^<-1>、9.93×10^<-3>cm^<-1>と決定された。 第3段階として、Mnの持つ実効的超微細結合テンサーの範囲(6.5×10^<-3>cm^<-1>〜8.5×10^<-3>cm^<-1>)でクラスターの各MnのEhfcを再現するプロジェクションファクターを示す磁気構造を酸素発生系Mnクラスターの構造として選択した。Mn原子間のEhfcの値より、クラスターを構成するMn間の化学結合の有無、種類についての議論が可能となった。
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