研究概要 |
以下の2つのナノ構造磁性体系について研究を進めた 1. 典型元素金属,貴金属の表面に置換した磁性イオンからなるクラスターのクラスターサイズおよび形状が磁性および物性にあたえる効果を評価することを目的に,前年度に引き続きアルミニウム中のコバルト・クラスタの磁性について調べた.計算は局所密度近似のもとで,KKRグリーン関数法を用いておこなった.局所密度近似による不純物計算によれば.アルミニウム中のCoは非磁性である.計算の結果.磁性の現れる最小のクラスターはコバルト原子を3個を再近接の正三角形にならべたものであることがわかった.クラスターのうちこのようなユニットをふくむものは全て磁性的であるのに対して.このようなユニットを含まない物はサイズが大きくなっても磁性を示さない.特に,同じ三角形でも頂角が90度のものは非磁性である.直角三角形のみを含む場合には反強磁性交番磁場を加えたときの帯磁率がきわめて大きい.実際,非磁性への収束はおそく,収束前の状態は強磁性的配列ではなく反強磁性的であり,反強磁性ゆらぎが大きいことを示している.このことから,直角三角形を並べて作られる一次元鎖は反強磁性的であることが予想される. 2. (In_1-x-yMn↑_xMn↓_y)As/(Al_1-zBe_z)Sb,超格子の電子状態をKKR-CPA法を用いて第一原理的に計算した.Mn↑とMn↓はそれぞれ磁化にたいして平行および反平行な局所磁気モーメントを持ったマンガン原子である.(In,Mn)AsではMnはアクセプタとなりp型伝導を示すが(In,Mn)As/AlSb超格子では(In,Mn)As層は空乏層となっている.(In,Mn)As/(Al,Be)SbではBeはアクセプタ不純物となり,Be濃度zを変えることによってキャリア濃度を調整することができる.キャリア濃度の高いところかで系は強磁性を示す.キャリア濃度の低いところでスピングラスの生じる可能性を調べるために,上向きモーメント,下向きモーメントを持つMn原子が不規則に合金を作る場合の計算も行った.その結果,(In,Mn)As/(Al,Be)Sbではz=0ですでにInAs層・のキャリア濃度は低くスピングラスが安定であるが.zの増加とともに,キャリア注入がInAs層に起こり,強磁性が安定化されることが分かった.このような安定化はすでにz=0.02程度の低濃度で起こる.強磁性が生じるメカニズムは二重交換相互作用の一形態であるといえる.
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