研究概要 |
電極上に固定化したレセプター単分子膜上での目的物質の分子認識によるマーカー物質の膜透過性の開閉制御を,電気化学的に測定して目的物質の定性定量を行うイオンチャンネルセンサー(ICS)について以下の研究を行った. 1) 分子間透過型 カルボキシル基含有合成レセプターSAM修飾金電極を用いて,マーカーをFe(CN)_6^<4->としてプロトン化アミン存在下におけるサイクリックボルタモグラム(CV)を測定した研究では,三価アミンに対する検出下限は10^<-7>Mであり,一価・二価アミンに対し高い選択性を示した.またこれは,チオアミド基を有する誘導体がこれを介して金表面にSAM形成することを示した最初の報告でもある.一方,チオクト酸SAM修飾金電極を用いて,マーカーをRu(NH_3)_6^<3+>,抗凝血物質である多価陽イオンプロタミンを目的物質とした研究では,検出下限は0.5μg/mlであった.以上2つの研究より,ICSは多価/高親水性イオンの検出に適した手法であると示唆された. 2) 分子内透過型 α-,β-,γ-シクロデキストリン誘導体(CD)SAM修飾吊下げ水銀電極を用いて,目的物質アダマンタノール(AD)がマーカーベンゾキノン(BQ)の還元に与える影響をCV測定により観測した.目的物質濃度の増加に伴い,マーカー還元反応速度はβ-,γ-CDでは減少したがα-CDでは減少しなかった.これは,ADがβ-,γ-CD内孔に入るがα-CDには入らないという以前の結果を考えると,ADのCD内孔へのサイズ選択的結合に基づきBQの還元反応が制御されたことを示している. 3) ICSの理論 ICSの機構は当初直感的に理解されてきたが,今回ICSのCV応答に対してレセプター電極表面濃度を初めとする様々な実験値が与える影響を,電極上でのFrumkin効果やホスト-ゲスト錯形成を考慮して定量的に予測するシミュレーションモデルを確立した.
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