研究概要 |
1 金属リチウム界面に対する低温サイクル前処理効果 金属リチウム負極を低温で数回予備サイクルさせることにより,「充放電反応に適した界面の構築」を行う新規手法について精査した。その結果,この効果は用いる電解質と電解液溶媒の両者に左右されることが判明した。電解質塩としては六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が適し,溶媒には含環状エーテル溶媒は不適で,カーボネート系が適することが判った。この場合,低温予備サイクルにより形成された界面が昇温後もコンパクトなまま維持されるが,含エーテル類溶媒ではイオン移動に不利な界面に変化していた。カーボネイト系溶媒で低温サイクル前処理(-20℃にて10サイクル)を行うと,長期サイクル試験では25%も効率が向上した。 溶媒依存効果の解明には,リチウムと溶媒との相互作用を明らかにするラマンスペクトル測定が有効であることが判った。 2 金属ヨウ化物添加剤による金属リチウム界面の高効率化 金属リチウムの充放電効率向上を狙った電解液用添加剤として,金属ヨウ化物の効果を検討した。その結果この種の添加剤が効果を発揮する条件として,電解質(リチウム塩)との相性が極めて重要であることが判明した。例えば電解質としてLiPF6を用いた場合,ヨウ化アルミニウム(A1I3)添加では無添加より効率は低下したが,ヨウ化マグネシウム(Mgl2)添加では効率が向上した。添加剤と電解質塩の相性が効率を左右する機構については,LiPF6塩を用いた場合,A1I3添加では電極界面にリン酸などの塩分解生成物が蓄積し,これが充放電反応を阻害することが明らかになった。一方MgI2添加では阻害物生成反応は起こらず,電極界面の好適なモルフォロジーを維持するLi-Mg合金が形成された。この様に添加剤効果のメカニズムについても界面現象から合理的に説明できた。
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