研究概要 |
ガリウム元素は周期律表で13族第4周期にあり,アルミニウムの一つ下に位置している.有機ガリウム化合物は半導体製造に大量に使われているが,有機化学的にはほとんど取り上げられなかった.同族の有機アルミニウム化合物に比べて,特徴的な性質を見い出すことができなかったためである.しかし最近,我々は新しい着想によって,有機ガリウム化合物に特徴的な新反応を見い出しつつある.特に,塩化ガリウムが炭素-炭素不飽和結合を強く活性化することが分かってきた.本研究では,この新しい有機ガリウム化合物の化学を解明するとともに,オレフィン,アセチレン,芳香族化合物といった不飽和化合物を直接カップリングさせる新反応の開発を行う. 塩化ガリウムを用いる芳香族β-シリルビニル化反応について,特に反応中間体の構造と反応性の詳細な検討を行った.その結果,アセチレンと塩化ガリウムの錯体,アレニウムカチオン中間体,およびビニルガリウム中間体をスペクトル法によって捕捉した.また,1,2,3-トリメトキシベンゼンとの反応では,2位でipso-置換反応を起こし,グリニヤール試薬やアルキルリチウム試薬で処理すると,5位にアルキル基を導入できることを見いだした.ところで,芳香族化合物が存在しない反応条件では,塩化ガリウムによってシリルアセチレンが三量化を起こし,共役トリエンをあたえることを見いだした.ここでは,上で述べた有機金属試薬による処理で,末端炭素がアルキル化された.なお,有機ガリウム化合物が不飽和結合にカルボメタル化を起こすことを利用して,シリルエノールエーテルのビニル化反応を開発した.
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