研究概要 |
序論 前年度の研究成果により,アミン,特にポリアミン類が珪酸の水溶液中での重合反応を加速し,結果として有機ー無機ハイブリッドが生成することがわかった。今年度は,この珪酸とアミンのハイブリッドを有機反応の触媒として用いる可能性について検討を加えた。 実験 実験としては,アミンと珪酸の比をいくつか変えたハイブリッドを合成し,これらの触媒活性について検討した。反応は,活性カルボン酸エステルの加水分解反応および,リン酸エステルの加水分解反応について,それぞれ,ハイブリッド触媒の活性を検討した。反応は水溶液(緩衝溶液)で行い,反応速度は分光光度計を用いて追跡した。速度定数を種々のpHにおいて測定した。 結果 p-ニトロフェニルエステルの加水分解を硼酸緩衝液中,20℃において検討した結果,反応速度はpH8.0で最大になり,酸塩基の協同的な触媒作用のあることが示唆された。単なるシリカゲルに比べて反応速度はこのpHで約2倍であった。 また,興味深いことに,今回合成したシリカーアミンハイブリッドは,シリカ/アミンの比が大きなものについては撥水性であった。これは,ハイブリッドの表面に露出するシラノール基とアンモニウム基がそれぞれ,アニオン性,カチオン性であるので,それらのバランスにより,表面の水に対する親和性が異なるためではないがと考えられる。 結論 今回新しく合成した,アミンーシリカゲルハイブリッドは,エステルの加水分解反応に対する触媒活性を示した。さらに,通常のシリカゲルとは異なる表面の性質を示すこともわかり,新規材料への展開が期待できる。
|